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「ニームの闘牛」 佐伯泰英
Vol.04(1996年11月18日発行より)
長いこと闘牛愛好家を自称してきた私だが、まだプロヴァンスの闘牛を見たことがなかった。そこで今秋、見物に行った。しかし光溢れるはずのニーム蒲萄収穫祭の闘牛は雨に祟られて、寒い闘牛になった。

スペインと並ぶ闘牛の王国フランス南部のニーム、アルルの闘牛の特徴は、紀元前一世紀ころに建設された円形闘技場を使って、スペイン様式の闘牛が行われることであろう。さらには頭上に反り上がった角を有するカマルグ産の牡牛の出場であろうか。

ニームの闘牛場は横133M、縦101M、観客2万4千人と馬鹿でかい。だが、補修は極めてフランス的(?)で必要最小限にしか為されてない。ローマ時代、四つの身分にきっちりと区分けされた観客席の最上34段目は、ビルの7、8階に相当する。が、手摺りもなければ柵もない。祭酒に酔って、足を踏み外すのは当人に責任、というわけだ。

この闘牛場で久し振りにホセリートの闘牛を見た。両親を幼いころに失った彼が闘牛士を志した理由は、有名になって、生き別れた妹を探すためであった。私は正闘牛士にデビューした86年の夏からこの好青年(まだ少年の面影を存分に残していた)を見てきたが、数年振りに会うホセリートは堂々とした闘牛士(マエストロ)に成長していた。

闘牛にはパソドブレという闘牛士の、観客の気持ちを高揚させる音楽が付き物だ。このパソドブレは、入場行進、場の変わり目、それに素晴らしい闘技が展開している時のみに演奏される。冷たい雨に冷えきった場内の雰囲気を高めるように演奏を始めた音楽隊に、ホセリートは闘いを中断して音楽を制止した。自分の闘牛は、パソドブレを演奏されるには値しないというわけだ。そうしておいて、文句なしに凄味のある闘技を見せて、コロセウムを音楽なしでヒートアップさせて見せた。

古代コロセウムにさんざん降り落ちる雨。楕円のアレナには水溜まりができ、それを牡牛の血が赤く染める。さらには水に足を取られて角に跳ね挙げられる闘牛士。なんとも凄惨な風景のはずだが、すべてが巨大な建築物の観客席から見物していると、歴史の一駒の絵巻ものでも見るように覗き見しているようであった。
佐伯泰英プロフィール
佐伯さん(作家)は私の芸術祭賞受賞作品「赤い靴、私抄」の演出を手がけた方です。この11月20にピカソのゲルニカにインスピレーションを受けた力作「ゲルニカに死す」が文芸春秋から出版されます。(小林伴子)
 
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