小林伴子 フラメンコ・スペイン舞踊教室・高田馬場駅から徒歩1分
  AMIGO(小林伴子・後援会)
  会報「AMIGO」
     
「ワタ、シハコバ、ヤシトモ、コデス」 (創作について)
Vol.03(1995年11月13日発行より)
 
   
菜畑

アミーゴ・インタビューの第3回は、私が絵画の仕事をしている関係からですが、身近なところから入ります。スペインには、ピカソ、ミロ、ダリそしてガウディなど、世界的にすごいスケールのアーチストが出ています。フラメンコとは違うかも知れませんが、そういう独特のエネルギーをスペインにいかれている時、感じましたか?

     
小林

スペイン人は自分という意識がとても強い人々で、日本人のように平均値や中庸を尊ぶ民族とは、根本的に違っています。日本人は80%が80点という国民性ですが、スペインは突然天才が現れる国です。

 
     
菜畑

個性は小さい頃から日常生活で、大事にしているのですか?

     
小林

大事にしているっていうよりは、自己中心的で、私はこうだっていうのがとても強い人達です。だから喧嘩するとか、意見が反対になるっていうのを別に日本人のように恐れることはないようですよ。だから、言いたいことを言ってお互いに分かり合おうじゃなくて、言いたいことを言って喧嘩して、お互いそれぞれの利益を守るために白を黒と言っても自己主張をする、絶対に謝りません。力関係で利益が一致したところで、決着します。

     
菜畑

素晴らしければ、相手を認めて受け入れるということですか?

     
小林

それもたぶん日本的な考え方と違って、もっと力と力の動物的な感覚だと思うんですよね。だからよく思うのは日本は形で地位とか身分とかを区別していくし、地位が違えば言葉使いも変わっていくけれど、スペインでは、日本語の敬語に当たる言葉はありません。

トゥが「おまえ」でフランクな言い方、ウステは「あなた」という使い方で丁寧な言い方なのですが、これはあなたと私とは違いますよ、という意思表明ですから、目下の人にも使います。私の下宿していた貴族の称号を持つ家の奥様は、使用人に対して絶対、トゥとは言わないでウステを使っていました。

     
菜畑 今、新宿で「アントニオ・ガウディ展」をやっています。構造的なことや色のバランスなどはしっかり考えてはいるんでしょうが、日常建築とはかけ離れたオブジェのような形は、底知れず圧倒されますね。
     
小林 すごい強烈な力ですよね。ただ私には、突然変異の天才とは思えません。歴史の中の昔の建物なんか見ていると、そういう屋根のうねりとか、柱のぐるぐる巻いているスタイルとか、結局ゴシックとかバロックとかああいう系統の歴史が脈々と続いているんだと思います。セビージャのヒラルダに登って、大聖堂の屋根のうねりを見た時、ガウディを連想しましたが、ヒラルダがガウディに似ているのではなく、ガウディがヒラルダから出ているんですね。
 
     
菜畑 話は変わりますが、小林さんの今後の創作活動について、聞かせて下さい。
     
小林 ものを創るということと、踊りを踊るということは、ちょっと違うかもしれないと思います。踊るっていうのは、ある意味ではすごく受動的な面があって、音楽を聞いて自然に体が動くとか、表情が変わるとか、より直接的なんです。それも、創造と言えなくはないと思うけれど、舞踊の創作家として作品を作ることと、自分が踊り手として踊っていくこととは、意味合いが違うと思うんですよ。

クリエイティブな部分で作るっていう作業をする人と、踊りを踊って楽しい、体を動かして楽しいっていう人とは、必ずしも一致しない部分があると思うんですね。私は画いたり、彫刻したりも好きでしたから、そういう部分が作品を作る活動につながるのだと思いますが、本質的に踊りの部分では、反応して体を動かすタイプです。1回目の公演以外は、5回目まで創作作品の型をとって来ましたが、作りたいと思う題材に一区切り付いたので、今後は原点に帰って、踊っていきたいと思います。
     
菜畑 多摩美術大学の講師をされていますが、内容はどのようなものですか?
     
小林 身体造形学科の生徒に教えています。俳優を志す人が多いようで、いろいろな体験をしてもらい、自分の進む道を見つけてもらおう、という主旨のようです。中には、前からフラメンコをやっていた方ですが、スペインに留学することになった人もいます。
授業内容は、フラメンコの一番の特徴であるリズム(コンパス)を中心に進めていますが、自分たちの日常のあらゆる動きが、リズムを持っていることに気付くことで、自分のジャンルに何か役立ててくれれば良い、と思っています。
   
菜畑 日本人がフラメンコを習うのは、難しいですか?
   
小林 フラメンコに限らず、外国の文化を習得するのは大変なことだと思います。本格的にやればやるほど、大変になって行きます。無邪気に外国の文化に取り組んでいくのは、日本人がエネルギーのある証拠でもあると思うし、摂取同化の繰り返しの国民性を思えば、自然なことだと思います。

ただ、真摯な気持ちで、それぞれの文化を尊重しなければいけないと思います。子供の時からフラメンコを習うのであれば理屈はいりません。大人の方に教える場合、踊りを丸暗記するのではなく理解してから、繰り返し練習する方がより近道だと思うんです。

例えば踊りを、「ワタシハ、コバヤシ、トモコ、デス」という文章だとします。丸暗記してしまって、その意味も分からずにしゃべってしまうと「ワタ、シハコバ、ヤシトモ、コデス」と本人は解釈しているしているかもしれません。表情豊かな人ならば、それでも外から見れば、それなりに形になってしまうのですが、フラメンコには、フラメンコのセオリーがあって、スペイン人のプロの人たちは、それを体で体得しています。

外国人である私たちは、まず、頭で理解してから、何度も正しく繰り返すことで、根気良く習得して行くしか方法はないと思います。
  (1995.10.9 アトリエ・ラ・ダンサにて)
 
 
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